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漫画『響 ~小説家になる方法~』  1巻 感想

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 漫画『響 ~小説家になる方法~ 1 』書評。作者は柳本 光晴さん。ある天才女子高生作家の物語である。マンガ大賞2017受賞作品。

 出版社の新人文学賞に、一つの作品が送られて来た。原稿用紙を使い、自筆で小説が書かれているが、本人の性別や年齢、住所、職業、電話番号の記載はなく、本名かペンネームかさえわからない「鮎喰 響」という名前だけが書かれた応募原稿である。作品の応募はデジタルデータのみ受け付けされるため、原稿用紙で送られて来たその応募作品は、ごみ箱へ捨てられてしまったのだが、編集部の若手女性部員の花井が、その原稿が気になり読んだ。

 現在の文学界の常識を一掃させてしまう、新しい作家の出現を望んでいる花井だが、その応募されて来た作品を読んで、思わず息を呑んでしまう。粗削りではあるが文学界を変えてしまうほどの作品と感じたのだ。この作品を新人賞に応募させるべく先輩である大坪に、締め切りに間に合わせようと原稿の半分をデータ化するよう頼み込む。原稿を書いた本人と連絡すらできない状況であるにもかかわらず。

 主人公・響は、口数や表情も少ない、本を愛する北瀬戸高校一年の女子高生。孤高を貫き、自分が信じたことは決して曲げることがない性格の持ち主。入学初日に学校の不良の溜まり場となっている文芸部に入部するが、文芸部の不良を相手にしてもまったく動じない響の態度に、当然ながら不良たちは怒りを覚え文芸部に入部させまいと、嫌がらせをする。

 主人公のその恐ろしいまでの誰にも屈することがない自信と、たとえ目上の人間であっても矛盾することに対し自分の信念を曲げずに立ち向かう性格に、不良たちはとうとう音を上げてしまうしまうのだ。こうして無事、文芸部に入部した響であった。彼女と一緒に高校へ入学し通学を共にする中学からの同級生の涼太郎はいたって普通の性格で、さっそく話し相手を作るが、入学したての友達を作ろうともしない響を心配し、友人の誘いを断り同じく文芸部に入部する。

 作者である柳本 光晴さんが持つ天才のイメージは、太宰治三島由紀夫などが、一般の人たちとは違い、孤高で常識破りの資質を持ち、人間離れした独特の感性を持った、神がかった、カリスマ的な傑物なのかもしれない。主人公・響は、作者のその天才のイメージを再現しているものと感じる。

 天才は、普通の人たちから見ると非凡である。イチロー選手は、小学生の時から毎日、バッティングセンターで練習をしていたことを、インタビューで語っている。エジソンは、電球の発明に成功するまで一万回、実験を繰り返している。天才はいきなり天才であるわけではなく、人知れず影の努力を続けているが、しかし人は、突然、目の前で天才に出会ってしまうと、それまでの努力を知る由もなくその非凡さに驚かされてしまう。

 一方、人が持つ感性や五感、第六感など先天性の面では、人それぞれ違う能力を持っている。ある人は視覚に優れ、ある人は音に長け、また味覚に敏感な人など、誰がどの分野に秀でているのかは様々である。そして、たとえば歴史に名を残す音楽家は、音も聞かず譜面を見ただけでその楽曲の素晴らしさを理解してしまうが、天性によるものか努力によって磨き上げたものかは人それぞれ違うため、判断が難しい。

 主人公・響が持つ文学に対する感性。イメージする世界観や事象の捉え方、切り口。そして、それを物語として表現する能力は、天性なのか努力によるものかどうか。それは第一巻では、まだわからないが、いずれにせよ異彩を放つ天才なのである。

 最新のコミックスは、第六巻が発売されています。