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漫画『アレンとドラン』 第1巻 感想

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 漫画『アレンとドラン 1 』書評。作者は、麻生みことさん。主人公・林田(愛称:リンダ)は、田舎から東京の大学に進学してきた文系女子大生。ミニシアターで、マイナー映画を観ることが好きな映画オタク。その彼女が、恋愛を通して少しずつ成長していく物語。

 主人公は、同級生が遊びに行こうと誘って来ても、逆に、映画を観に行こうと誘ってしまうほどのサブカル系の変わり者。映画の話になると夢中になり、自分の好きな映画の話ができる相手としか相性が合わないと思い込んでいる。でもほんとは、生きることが下手で、対人関係が苦手で、空気が読めない人間と思っている。言いたいことも言えない自分を自己嫌悪していて、内心では、どうすればいいのかわからず、一人、悩んでいる。

 SNSで映画談義をするのが日課の林田は、自分の親と同じくらいの歳のオヤジに出会う。そしてある日、そのオヤジと会うことになるのだが、そのオヤジは下心まる出しで、彼女は襲われてしまいそうになる。そこへ隣の部屋に住む同じ大学に通う、一年、先輩の江戸川(愛称:エドガー)が現れ、危機一髪で彼女を救う。

 イケメンでサブカル無感心男子のエドガーは、バーでバイトをしているのだが、ある日、彼女がそのバーに現れた。先日の、みっともない姿を彼に晒してしまった行きがかり上、自分がどんな人間であるかを話はじめる。自己嫌悪し自分を卑下していること。恋愛もしたことがないこと。そして、そんな自分を変えたいと思っていること。洗いざらい彼に話すのだ。

 エドガーは、彼女の切実に訴える姿に胸を打たれたのか、その後も常連客のようにやって来る彼女の相談役になって行く。事あるごとに話を聞いてくれ、そして、ある出来事がきっかけで、主人公は自分を受け入れてくれる彼に、心のやすらぎを感じはじめるのだ。

 穏やかで落ち着き払った物腰のエドガー。怒ることもあるが、人付き合いの経験が豊富なのであろう、大人びた振る舞いで気の利いた対応ができるクールさが特徴的だ。彼女からすれば、気持ちを和らげ、安心感をもたらしてくれる頼れる人物なのは間違いない。時には不安定な気持ちになる彼女とは対照的な彼が、ストーリーをとても落ち着いたものにしてくれる。

 サブカルのマイナー映画を好み、この手の映画の話ができる人としか友達になれないと考えている主人公。大学に入学するまでにもたくさん苦しい思いをしてきたはずで、もし、中学や高校生時代に親友が作れたなら、それなりに過ごして来たはずだ。しかし、残念ながら彼女を理解してくれる人がいず、自分を受け入れてくれる人に、これまで巡り合わなかったのだろう。

 生きづらいことなど世の中には山ほどあり、自分に自信が持てない時も、生きることが下手と自己否定することもある。これは男も女も同じだ。しかし、もし自分の努力が足りないなどと考えているなら、全然違うところに、その答えがあるということを気づかせてくれる作品だ。時折、発するエドガーのキメ言葉に気が引き締まるが、主人公が徐々に周りに溶け込み、かつて感じていた生きづらさから少しずつ解放されて行く姿は、心地よい風を運んでくる。ほっとするストーリー。

 コミックスは、第一巻が出たばかりで、この先、どんな展開になるのかわからないが、繊細でたおやかなストーリになると思う。