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漫画『和泉さんはわりと魔女』 1巻 感想

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 漫画『和泉さんはわりと魔女』第1巻。作者は、雪白いち(ゆきしろいち)さん。感情を失っている高校生魔女の主人公が、様々な人の記憶を引き出していく物語。コミックスの帯には「あなたの気持ちを学ばせて」とある。彼女はきっと感情とはどんなものなのかを知りたいと思っている。

 高校生の主人公、和泉雫(しずく)は両親から疎まれ祖母と暮らしていたのだが、その祖母が亡くなった。でも雫は涙を流さない。彼女には感情が無いのだ。生まれつきなのか、何かの出来事でそうなったのかはわからない。その祖母が亡くなってから、ある日、一通の手紙が来た。祖母からのものだ。亡くなってから手紙が来るという不思議な出来事。実は彼女の祖母は魔女。そして、主人公の雫も魔女なのだ。もちろん普通の人とかわらない。ただちょっと不思議な能力を持っている。

 祖母からの手紙には、大切にしまってあるたくさんの贈り物を送り主へ返してほしいというものだった。彼女の祖母は、多くの人から贈り物をされる人柄だったのだ。ただその贈り物は送り主にとって意味のある宝物なのだ。雫の魔女としての能力のひとつは、人やものにまとわりつく糸を見ることが出来る。贈られた宝物にまとわりつく糸が、何かを物語っているいわくありげな物とわかるのだ。

 まず初めに小さな絵を送り主に返すことにした主人公は、その小さな絵にまとわりついた糸を見、そして手紙に書かれた持ち主へ返すことにした。しかし、その送り主にも多くの糸がまとわりついていた。その人は、今、認知症になっていて、病気が糸としてまとわりついていたのだ。そして既にその絵が何の絵なのかわからなくなっている状態のため、雫は魔法を使うことにした。送り主にまとわりついた糸がするするっとほぐれた時、その人はその絵が何の絵なのかをすぐに思い出した。やはり大切な宝物だった。

 感情を失うと人はどうなるのか。嬉しい時には笑い、悲しい時には泣く。腹が立てば怒るが、そういった喜怒哀楽が無い。それがこの作品の主人公だ。笑うことも泣くことも、怒ることもしない主人公。人からありがとうと感謝されたり、迷惑をかけて怒られても何も感じない。頭で想像はできることなのだが、そのような経験が無いため、感情を失うという実感は理解できない。ただ生きている、という以外に言い様が無い。

 そんな主人公が、魔法を使って他人の感情に触れるとどうなるのか。雫の同級生で宝物返しを手伝ってくれた椎名樹に雫の清純さを告げられた時、彼女は涙を流す場面がある。人の真心に触れて感情が生まれたのだ。

 贈り物を返す作業は始まったばかり。作中に数々のエピソードが掲載されているが、どの話も目頭が熱くなる話ばかりだ。もし、祖母への贈り物をすべて返した時、人として普通の感情を手に入れることができれば、これはきっと祖母からの雫への贈り物だ。

 主人公の雫は感情が無いが、人の感情をまとわりつく糸として見る能力がある。魔女としての不思議なこの能力は、気配を感じるといった氣に気づく能力かもしれない。もし、彼女が自分自身のまとわりつく糸を見ることができるのなら、彼女には感情があるということだ。宝物返しの中で少しでも氣に触れれば、きっと雫に感情が生まれるはず。

 既に第1巻の数々のエピソードでもうかなり涙腺崩壊寸前なので、雫の活躍と作者・雪白いちさんの感性に期待120%だ。

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