のり弁当 - 漫画の感想ブログ -

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漫画『波よ聞いてくれ』感想と考察

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 どうも語り切れてないモヤモヤしたものがあるので、感想の続きとして「感想と考察」を書いてみる。特に言葉だらけという点から。

 主人公・鼓田ミナレは、想像以上に頭の回転が速いというか、考えてる間もなく先に言葉としてしゃべっているキャラだ。良くも悪くもレスポンスが良い。打てば響くような反応の見事さに脱帽する。しかし、普通なら返事に困ることを相手に言われることもあるはずで、そこにしばしの間が空くものだ。沈黙の時間。ところがミナレはあらゆる会話という会話で、間髪入れず切り返してしゃべる。しかし何も考えずに会話をしているのかというと、そうではない。見事なまでの的確な言葉で切り返している。

 彼女はラジオのDJだから、卓越したトークには、こうしたアリのはい出る隙もない、次から次に機関銃の弾のように言葉が出てくるのが当たり前なのかもしれないが、これがラジオの世界だから通じる話であったとしても、普段、一般的な日常会話でDJ並みにしゃべられられると、聞いている方がうるさくて仕方がないだろう。子供ではないのだからTPOくらいは理解しているにも関わらず、瞬時に切り返してしゃべる。相手がディレクターであろうと、カレー店の店長であろうとおかまいなしだ。目は口ほどに物を言うといった人の内面を表す、そういう面がミナレにはないのだ。いや、あるにはあるがのだが。

 もちろんミナレがこの有り様なので、緩急を入れるためだろう、登場する彼女の周りの人たちは、結構、物静かではある。それが登場人物によっては不気味に思えたりもする。結果として、漫才のボケとツッコミよろしく、ミナレが怒涛の如くしゃべればしゃべるほど、周りの人物のしゃべらない個性が際立ってくる、という相関関係が出来上がっている。

 ただ、ミナレだけがしゃべているわけではない。特にラジオ局のメンバーは、しゃべることで飯を食っているという具合で、話し出すと止まらないということもある。第4巻で、先輩DJの茅代(ちしろ)まどかと、夜の公園で話をするシーンがあるが、酒の勢いもあるのか、茅代はやはりしゃべまくっている。これまでは言葉数少ないキャラだったのだが。

 とにかく、たわいもない話から番組作りの話から、DJミナレのトークから、やたらめったら言葉や会話が出てくる作品なのだ。唯一、カレー店の店長を交通事故に遭わせて重症を負わせてしまった城華(たちばな)亨の妹のマキエが、何を考えているのかわからないほど無口で、不気味な雰囲気を醸し出している。

 ミナレの切り返しの速さと、ツボを突いた小気味よい返事が人気の作品だが、描写から人の内面を想像したり、誰もしゃべらない無言の時間。そういう場面が少ない。あれもこれも話てくれるので、わかりやすいといえばそうなるが、次から次に出てくる言葉に圧倒されてしまうという作品だ。ここまで言葉に拘る作品も珍しいかもしれない。

 あと、個人的な意見として、漫画なので吹き出しが出るが、場面によっては誰が話している言葉なのか、こんがらがってしまうという難点があり、言葉の多い漫画は少々、読むのに苦戦する。特にコミックスになると原作版よりも小さいサイズになるので、雑誌で読む場合はもう少し楽かもしれない。